一見生産性が低いようにも見えますが、ゆっくり丁寧に出来上がった生地は独特の柔らかさとやさしい肌触りが生まれます。また、伸縮性に富んでいて赤ちゃんの体を優しく包み込むため、肌にぴったりとくっついて赤ちゃんの体温調節や汗を吸い取って外に放出する手助けをします。だからいつでも「きもちいい。」ウェアとなります。
吊天竺はなぜ「きもちいい。」のか。それは「ゆっくり」に理由があると思われます。生地の原料となる糸は細かい繊維の集まりなのですが、高速で機械の中を通ると所々で引っ掛かりやすく、生地に変わっていく過程で「やせて」いきます。また、高速回転に耐えるよう糸のテンションを強くして伸びきってしまうため、伸縮の余裕がない状態になってしまうのかも。。。と思います。
実は吊天竺を使ったウェアは縫製工場にとっても難しいようです。
裁断した生地の角が丸まってしまいやすかったり、ミシンをかける途中で少し力が入ると伸びて目が崩れてしまったり。。。工場の社長さんと以前お話ししたとき、初めて来たときはなかなかうまく縫えなくて最後は「この世に縫えない生地があるわけがない」という執念で克服したんだとお聞きしました。
その時にお話が出た中に1つヒントがありました。
「新しい縫い手のスタッフが入ったときに自分の最初の仕事は、その人が上げたミシンのスピードをタイミングを見計らって"最低速"
に落とすことなんだ」
つまり、難しい生地だけどゆっくり丁寧に作業をすればいいものができる。スピードを上げて欲張ってたくさん仕上げようとするとうまくいかない。
知多木綿ガーゼの生産も同じですが、「ゆっくり」にすることでできなかったことが誰でもできるようになり、やさしいウェアができるというのがコツなのかもしれません。